#9 Barbaric WORKS

神奈川県茅ヶ崎駅。電車の発着時にはサザンオールスターズの「希望の轍」が流れる湘南を代表する駅から徒歩2分の場所にクラフトビール醸造所「Barbaric WORKS」併設のレストラン「Gold’n BuB」がある。 この店は遠目からでもその楽し気な雰囲気が伝わってくる。店内はその細部までリアルを追求したこだわりを感じる空間が広がる。内装デザイン、音楽、料理、ドリンクの全てが調和したこの店の常連は「Gold’n BuBの常連」であることにある種のステータスを感じている風にも感じられる。

そんなGold’n BuBを経営するのが、株式会社 安藤商店の代表取締役である安藤佑一氏(通称パンチョさん)だ。サーフィンで鍛えられたその腕には、パンチョさんのトレードマークでもあるタトゥーがびっしりと描かれている。その強面な風貌とは裏腹に店への愛情、スタッフへの愛情を持ち合わせた魅力的な人だ。今回はそんなパンチョさんと5月からBarbaricWORKS(以下、バーバリック)のヘッドブルワーに就任した布施氏にお話を伺った。


(手前からパンチョさん、布施氏)

バーバリックワークス誕生の軌跡

(パンチョさん)2016年9月に茅ケ崎で醸造をスタートしてから、もうすぐ丸8年が経過しようとしています。元々は飲食業が母体ですが、2店舗目としてクラフトビール専門店「Gold’n BuB」を辻堂にオープンしました。当時、国内のブルワリーさんのビールのみを扱っていましたが、IPAのようにパンチのあるビールが多く、飲みづらいと感じることがありました。そんな中「自分たちでビールを作ろう」と思い立ったのです。 また、会社の将来を考えた時に、飲食店という「売り手」ではなくビールの「作り手」としての道を選ぶことが僕ら「らしさ」に合っていると判断しました。具体的なメリットとして、店舗展開をして規模が大きくなることで材料の仕入原価を下げる効果があり、スタッフのモチベーションも向上します。スタッフに「飲食店運営の限界」を超えた「作り手としての幅広いビジョン」を見せることができるのです。 「ビールの作り手の醍醐味」は料理を作る楽しみに近い感覚で、お客さんに驚きを提供することができる点です。飲食業界で勝ち残るためには、お客さんに常に新しい驚きを提供し続ける必要があります。ビール醸造を通じて「ここまでやったら驚いてくれるだろうか」という探求心を持ち続けることが重要です。 コスト削減、スタッフのモチベーション向上、お客さんへの驚き提供という観点から、飲食店としての店舗展開でバーバリックの血が薄まるよりも、「作り手」としてうちの濃いカルチャーを維持しつづけていきたいと考えました。

「お客様への驚きを提供しつづけること」これがバーバリックの根源として根付いているようだ。実際に店が提供する来店体験には、いずれも細かな工夫が凝らされていた。 そんなパンチョさんが茅ケ崎に活動の拠点を置いた経緯は意外なものだった。

(パンチョさん)茅ケ崎にルーツは何にもなかったんですよ(笑)。元々東京の飲食店で働いてたんですが、私の彫師が茅ケ崎に住んでいて、彼も私もサーフィンが好きだったので、よく「茅ケ崎においでよ」って誘われ、茅ケ崎にちょいちょい遊びに行くようになったんです。 一緒に海に入ったり、その人の家に入り浸ったりしているうちに、ある日「隣の部屋が空いたよ」って聞いたんで、その帰り道に部屋を契約して引っ越しました。しばらく茅ケ崎に住みながら東京の職場に通っていたんですが、茅ケ崎のスペインバル「エルマンボ」との出会いが私のキャリアの分岐点になりました。ビーサンと短パンでワインやタパスを楽しむお客さんを見て、都内の店にはない魅力を感じたんです。思い切って「3~5年で独立したいんだけど、入れさせてくれ」とお願いし、そこでの経験を積むことになったんです。こうして、茅ケ崎に根を下ろし、独立を目指す道が始まりました。

「海帰りの服装のままでカジュアルに肩肘張らずに、美味しい料理やお酒を楽しめる。小さい箱でお客さん同士がオープンマインドで会話を楽しめる。」そんな雰囲気に魅力を感じたとのこと。「Gold’n BuB」が醸成する店の雰囲気はまさにその魅力を十分に発揮している。

ヘッドブルワーとしての新たな挑戦

この5月にヘッドブルワーとなった布施氏もそんなパンチョさんの思想やブルワリーとしての考え方に魅了された1人だ。

(布施氏)バーバリックにジョインする前は、別のブルワリーで5年間働き、ブルワーの業務全般を一通り経験しました。そこは規模も大きくオーナーがブルワーでもあったため、自分でレシピを考えてビールを作る機会はそこまで多くなかったんですね。一通り業務を覚えて、次に自分がメインでビールを作れる新しい環境を探していたところ、バーバリックの求人を見つけました。知り合いの紹介も相まって、正式にお世話になることになったんです。 バーバリックは元々業界でも有名で、自分もバーバリックのビールが好きだったし、スタイルもかっこいいと思っていたので、迷わずバーバリックの門を叩きました。 前のブルワリーは、1回の仕込みが2,000㍑と大規模な生産体制になっていました。これは全く悪いことではないですが、自分がビール醸造を始めた当初のイメージとは少し違っていて…大規模生産ではなく、自分の手が届く範囲でビールを作り、お客さんの反応を見て次に活かすという「手触り感」を持ちながらビールづくりに向き合いたいと思い始めたんです。もちろん、未経験の自分を受け入れてくれて醸造のイロハを教えてくれた前のブルワリーやオーナーには感謝しかありません。

バーバリックは、その規模感や自由度が自分の理想とぴったり合っていました。色んな挑戦ができる設備が整備されていて、かつ自分を信頼してくれて自由にビールを作らせてもらえる環境に魅力を感じています。まだ日は浅いですが、新たな挑戦の場として期待と同時に重い責任を感じています。

 

クラフトビール醸造の醍醐味の1つとして「カスタム性」が挙げられる。仕込みの度に、「前回はこうだったから、今回はここを変えてみよう」といったチューニングをかけながらブラッシュアップを図る。全く同じレシピでも醸造過程の温度が1℃違えば、ホップ投入のタイミングが5分違えば、完成されるビールの味は大きく変化する。そんなビール醸造の「クラフト」感に魅了されているように感じた。さらにバーバリックは醸造設備も充実しており、ブルワーが挑戦できる幅はとても広いと語る。

継続性と創造性を支える醸造サイズの選択

醸造所を開設する際にパンチョさんもその醸造サイズに関しては熟考を重ねたようだ。それは経営者としてのパンチョさんの合理的な判断に基づくものだった。

(パンチョさん)醸造サイズは悩んだ末に、最終的にこの規模に決定しました。単純な計算ですが、現状で500㍑タンク×6基で月間4,000㍑を醸造できる設備を持っています。それが仮に200㍑タンクまでサイズダウンすると、ブルワーを1名しか雇えないんです。小さい設備でブルワーが1人でひたすら醸造を続ける環境では、長く働き続けるのは難しいと思いますよ。その状況って「バトンを次の世代に繋げられず、ノウハウの蓄積もない。」つまり会社としての成長が見込めないのです。 今の生産能力ならブルワーチームに2名以上のメンバーを配置できます。この体制下なら彼らがクリエイティブな取り組みを実現できるのです。毎日作業が詰まっている状態では良いものを生み出すことは難しいでしょう。彼らが適度に外部のインプットを受け、アウトプットを繰り返す環境を作ることで、チーム全体の継続性が生まれます。 ただサイズは大きければ大きいほどよいというわけでもないと思っています。バランスを考えると、500㍑タンクというサイズが最も挑戦しやすいんじゃないですかね。これ以上大きくなると、クイックなチューニングが難しくなりブルワーの挑戦が難しくなります。作り手のモチベーションとのバランスを考えた時に、500㍑という規模が最適だと判断しました。この規模なら、創造性を発揮しながら、継続的に良質なビールを醸造できる環境を整えることができます。


メンバーのモチベーションと会社の成長を両軸で視野に入れているパンチョさんの経営者としての合理的な意思決定だ。 一方、日々店のカウンターに立ち直接お客さんとのコミュニケーションを図るパンチョさんは、現場目線も常に意識している。経営目線と現場目線を同時に持つこと、は非常に難易度の高い取り組みと思われるが、パンチョさんは自然体でその取り組みと向き合っているようだ。

 

手間暇を惜しまない醸造哲学:バーバリックワークスのこだわり

一見ブルワリー感を感じさせない「BarbaricWORKS」という名前にも強い想いが込められている。

(パンチョさん)バーバリックワークスの名前には「原始的」や「野蛮」といった意味が込められていますが、我々が掲げるのは原始的という言葉に含まれる「手間暇をかける」という思想です。「面倒くさいことをやろう、それが味に変わるんだよ」という考え方がベースになってるんですね。 例えば、今のホップの主流はペレットホップ(*1)ですが、僕らはリーフホップという生のホップをメインで使っています。生のホップを手もみして使用するんですが、それは大変な手作業なんです。ですがそれでビールの味わいが良くなるんです。ペレットホップを使うと、不要な苦味やえぐみが出てしまうことがありますが、リーフを使って手間暇をかけることで、クリーンな仕上がりになります。

(布施氏)個人的にはリーフの方がいい意味で草っぽさ、植物とフレッシュグリーンな感じがあるように感じます。ペレットだと、ややもするとちょっと香りが強く、エグミも出てしまいがち。それを調整するのがブルワーの力量次第なんですが(汗)。 リーフは仕入単価も高いんです。市場の流通量が少ないのに加えて、同じ重量でもペレットに比べて嵩が5倍くらい大きくなるので、その分送料も高くなる。それでもリーフをメインで使い続けているのはバーバリックのこだわりなんですね。僕自身、リーフをがっつり使いだしたのはバーバリックに来てからなので、今はどういう風に使うのがいいかなって、まだ試行錯誤の段階です。手もみの工程など手間暇かけてより良いものを作るんだっていう想いには強く共感しているので、リーフでどんな味を生み出せるか楽しみだし、その分責任感を感じています。

(パンチョさん)ベルジャン系ビールをとってもそうです。今では炭酸を加えることで発泡させることが多いのですが、うちは昔ながらの瓶内二次発酵で発泡させています。瓶内二次発酵はリリースできるまでのリードタイムが長期化するので、経済合理性を考えるとなかなか選びづらい方法ですが、味に関して言うと、泡が細かく、やわらかくなる。つまり優しい舌ざわりになるんですね。 これも前述の通り、「面倒くさいことが味に変わる」という考えに起因しています。

*1:ペレットホップは、ホップの花を乾燥・粉砕し、圧縮して小さな円筒形に加工したもの。その成分が濃縮されているため効率的で、保存性が高いのが特徴。

(リーフペレットを手もみしている様子)

多くのビジネスシーンでは「業務の効率化」がトレンド化している中、バーバリックはあえてその風潮に逆行している。それも「原始的たれ」という醸造所名からも納得できる。 この「手間暇をかける」という思想はワインソムリエの資格を持ち、ワインにも精通しているパンチョさんならではの考えに基づくもののようだ。

(パンチョさん)ワイナリーの仕事は8割が農業で、栽培から収穫、選定と仕込みとワインが出来上がるまでの手間暇は想像を絶するものがあります。一方で、ビール醸造は原材料も副原料も出来上がったものを購入したものがほとんどです。この観点ではワイン生産者の手間暇には到底追いつかないかもなんですが、我々はビール醸造の工程の一つ一つの作業を徹底的に手間をかけることで、味の違いを生み出せると信じています。手間暇を惜しまず、細部にまでこだわることで、バーバリックワークスのビールがその真価を発揮しているんだと思うんです。

クラフトビールはその醸造工程にまつわるストーリーも大きな要素であり、ファンの琴線に響くストーリーが商品の人気に直結するケースも多い中で、バーバリックはこのようなストーリーをコマーシャル的にPRすることはしない。そういったこだわりを大々的に発信しないその背景とは

コマーシャル的な発信って難しいですよね。例えば「オーガニック認証」や「亜硫酸塩不使用」といった言葉をスーパーで見かけますが、これらのラベルって僕は信用していないです。全部とは言いませんが、オーガニック認証を受けた商品でも、実際には認証を受けるために別の薬品が使われていることが多い。また、亜硫酸塩を使用していないと謳っているものでも、ソルビン酸といった別の添加物が使用されていることがあります。ソルビン酸は亜硫酸塩以上に体に悪影響を及ぼす可能性があるんです。 僕はこのようなコマーシャル的なアピールは必要なくて、シンプルにお客さんが美味しいと思って飲んでくれるものを提供していきたいと思ってます。手間暇かけて作って、自分たちが仕事終わりに飲んで美味しいと感じるビールこそが、お客さんにとっても美味しいと感じてもらえると信じています。 今のバーバリックの規模なら、大々的なマーケティング戦略を展開するよりも、品質にこだわり、誠実にビールを作り続けることが重要だと思うんです。お客さんに美味しいと感じてもらえるビールを提供することで、その良さが自然と伝わると信じています。

「言葉ではいくらでもとりつくろえる、良いものを愚直に届け続けることが本質的に重要だ。」そんな強いメッセージを感じた。実際、Gold’n BuBは来店行為そのものに経験価値があり、お客さんが口コミで店の魅力を発信してくれている。それこそが、店の最大のブランディングになっているのも納得できる。

 

バーバリックワークスの提供価値

来店する行為そのものが経験価値になる、Gold’n BuB。その店はあらゆる要素に強いこだわりがある。

五感で楽しむ飲食体験:こだわり抜いた空間づくり

(パンチョさん)飲食店では、美味しい料理とお酒があっても、それを楽しむ環境が整っていなければ、その美味しさは半減してしまう。音がなく、真っ白い事務所のようなテーブルと蛍光灯の下では、料理もお酒も美味しく感じられないですよね。重要なのは五感で楽しめるかどうか、だと思っていて、「誰と飲むか、どのような環境で飲むか。」それに関連するすべての要素に真剣にこだわっています。 例えば、聴覚に訴えるスピーカーや流す音楽、視覚に影響を与える内装は目に入るものすべてにこだわっています。壁紙とリアルな装飾の違いなど細部のこだわりがお客さんの体験価値に大きな影響を与えます。 自分がこの店に誰かを呼びたいと思ったときに、自信を持って呼べるような「リアルな空間づくり」、「隙のない完璧な環境」を実現したいです。料理×飲み物×空間で最高の飲食体験を提供することを目指しています。

渡米経験のあるパンチョさんが「アメリカカルチャーに影響を受けた」と話す通り、店内は西海岸の要素を取り入れつつ、パンチョさんオリジナルのデザインがふんだんに取り入れられている。多様なデザインが混在するなか、それらが調和し、お客さんと一体化している。なんとも不思議な魅力を感じる空間だ。

また、提供される料理、飲み物に対してのこだわりは言わずもがなだろう。

すべての商品に驚きを:こだわり抜いた提供と自由な発想

すべての商品でお客さんに驚きを与えたい。提供するすべてのアイテムは、完璧でなければならない。これは例外は許されないです。例えば、うちはビール以外にハイボールやサワーも出していますが、全てのメニューに一味違うものとして創意工夫を凝らしています。 逆説的に聞こえるかもしれませんが、これってある種「遊びの延長」と捉えているんです。この創意工夫自体が楽しくないと、作り手としてもやりがいを見出せないですし、遊び心がこもったメニューってお客さんも楽しんでくれると思うんです。 醸造に関しても、ビールをもっと自由に考える発想を大事にしています。ワインのように樽で長期間熟成させたり、お客さんを楽しませるためのツールとしてのビール作りに挑戦している。こうした遊び心を忘れずに、常に新しい驚きを提供することを目指してます。

確かにGold’n BuBではバレルエイジドビールやリアルエールなど珍しいラインナップを取り揃えており、メニューを眺めるだけでワクワクする。このワクワク感もバーバリックが持つ「遊び心」に紐づくものであろう。

未来への決意:会社を育て、次のステージを創る

これまで徹底的に自身のこだわりと向き合ってきたパンチョさんだが、直近では「会社、チームとしてのあるべき姿」に対しての考えが強くなってきたという。

会社の方向性としては、ここ最近ようやく腹が決まりました。 これまで自分がこだわってやりたいことを追求してきましたが、スタッフも増え、会社としても良い方向に向かっています。スタッフの給料も上がり続けています。しかし、今の延長では、頭打ちになることも見えてきました。仮に、独立を望むスタッフだけなら、「育てて外に送り出す」を繰り返すだけでも良いかもしれませんが、それでは長期的な解決にはなりません。 長く働いてくれている店長クラスのスタッフにとって、さらなる成長の余地を生み出す必要性を強く感じています。特に私と同世代のスタッフは、家族があり、家も持っているため、今の環境を維持することでは彼らの将来にとって良いものとは思えないのです。僕がやるべきことは、「会社を成長させ、スタッフにネクストステージを用意すること」だと強く感じています。

例えば、店長を任せていたスタッフが次のステージに進めるように、新しい店舗を開くことで、統括管理の役割を担えるポジションを増やすことができます。現場に立たなくても、複数店舗を管理、マネジメントする役職を設けることで、彼らに成長機会を提供できるのではないかと考えています。

「自分のためだけではなく、スタッフのために会社を育てること」が今のパンチョさんの優先事項だ。 組織が大きくなるために、「スタッフの成長」は必要不可欠であり、そのためにはスタッフ個々の特性に応じた多様な成長ステージを用意する必要がある。 「スタッフの個性を勘案して、各々に最適なキャリアプランを提示する。」言葉にしてしまえば、単純に聞こえるが、その難易度は非常に高いはずだ。

前述の醸造哲学でも触れたが、バーバリックが掲げるビジョンがスタッフの共感を得て、そのキャリアをサポートしていることは想像に難くない。

Barbaric WORKSにはビジョンがあります。「原始的野蛮な意味の通り、近代的な設備を使いながらも、先人たちが行ってきた仕事を大切に考え、非合理的な手間暇を加えて作るビール。様々なカルチャーと共に活動する。」です。 お酒を飲むシーンには、様々なカルチャーやコミュニティが存在します。私たちは、その各コミュニティの集まりにBarbaric WORKSのビールが存在してほしいと願っています。音楽、アート、乗り物など、様々なシーンにおいて、僕らのビールが共にあることを目指しています。 言い換えると僕らのビールはあくまでHUB的な存在でありたいと思っています。うちのビールを通じて、カルチャーや人々を繋げる役割を果たしたいと考えています。ビールを媒介にして、様々なカルチャーやコミュニティが交わり、新たな創造が生まれる場を提供すること。そんな世界を目指しています。


実際、Gold’n BuBに集まる常連は、多様なカルチャーで活躍している人が多い。 第一線で戦う人たちの多くには共通の魅力がある。それは、「自らで道を切り開こうとするバイタリティ」、「多様な価値観や考え方を受け入れるオープンマインド」だ。そんな人たちがあつまりGold’n BuBで語り合う空間はおのずと熱を帯び、また笑顔が絶えない。この空間から次々と新たなアイデアが創造されていくのだろう。

定番に縛られないビールづくり

(パンチョさん)いわゆる「定番」のビールは存在しません。常に新しいものを生み出すことをモットーとしていて、様々なスタイルのビールを作り続けています。もちろん人気のあるビールは定期的に作りますが、常に固定されたラインナップがあるわけではありません。むしろ、お客さんが来るたびに新しいメニューを楽しめることが、魅力の一つだと捉えています。 いくつか商品を紹介すると、最新のリリースものとしては「PLAYGROUND」(*1)ですね。Foeder SaisonというスタイルでFoeder(フーダー)(*2)の中で1年半、さらに瓶内で4〜5ヶ月の二次熟成を経たビールで約2年の長期熟成期間を経てリリースされる特別な一品です。 また、缶ビールでは比較的高頻度で作っている「HIGH TIMES」(*3)というアメリカンIPAがあります。これもまた、多くのお客さんに愛されている人気のビールです。

 

 

*1:「PLAYGROUND」の詳細はこちら

*2:Foeder(フーダー)とは、ビールやワインの発酵・熟成に使用される大きな木製の樽で、その独特の風味と伝統的な製造方法が注目されている。通常のオーク樽よりもはるかに大きく、容量は数千リットルに達する。主にオーク材で作られたフーダーは、その自然な木目がそのまま活かされ、液体と木材が直接接触することで、豊かな風味を生み出す。特に伝統的なベルギービールやサワービールの製造において重宝されており、自然発酵を促すために使われ、木材からの微量の酸素供給がゆっくりとした酸化を促し、バニラやスパイスのような風味が液体に移り、複雑で深い味わいを醸し出す。

*3:「HIGH TIMES」の詳細はこちら

「PLAYGROUND」はその熟成期間から、特別感の強い一品だ。このFoeder Saisonもパンチョさんのソムリエとしての原体験やバーバリックのビジョンに由来している。

(パンチョさん)樽熟成には時間がかかり、手間もかかります。この樽熟成にこだわるのは僕自身ベルジャン系のビール(ベルギービール)が大好きだということ、そしてワインからビール造りの世界に入った背景があります。樽熟成由来の複雑な味わいや香りが楽しめること、そして食事との相性が抜群であることもその理由です。 「ビールという枠」にとどまりたくないですね。「これは何なんだ」と思わせるような、新しい驚きと楽しさを提供したいのです。ビールの免許の範囲内で最大限ワクワクするようなメニューを作り続けたいですね。

 

 

実際にPLAYGROUNDを店で飲ませてもらった際にも、同席した方が「これがビールなんだ!?」と驚いていた。今まで飲んだことのないビールを飲む経験自体が非常に貴重なものであった上に、このような商品を継続的にリリースすることで、クラフトビールへの理解が深まりマーケット全体の拡大に寄与しているのは疑いの余地がない。

ただし、クラフトビールマーケットに立ちはだかる課題は流通全般だとパンチョさんは言う。要冷蔵という特性やステンレス製のケグの行き返りの配送コストがが大きな障壁になっているようだ。昨今は卸先で廃棄できるプラスチック製の樽が増えてきているが、環境への負担を嫌がるパンチョさんはステンレスの樽にこだわっている。それもサーファーならではの環境への配慮なのだろうか。

茅ケ崎エリアで疑いのない存在感を放っているGold’n BuBが今後、店舗を拡大しマーケットへの与える影響を大きくする未来はそう遠くないだろう。トレードマークのタトゥーも日々アップデートしているパンチョさんは会社の経営、店舗の磨きこみもアップデートしながら、ものすごいスピードで前進している。そんなBarbaric WORKSの今後の活躍に注目したい。(ビールボーイ編集部)


Barbaric WORKS

神奈川県茅ヶ崎市幸町23−21
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